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プロローグ
突然降り出して来た雨。
恨めしく思って空を見上げたときに、さしかけられた黒い傘。
「濡れる」
「わかってる。でもさ、この傘じゃ意味ないから」
さしかけられた黒い傘は、大小様々な穴が沢山あいていた。
あまりに穴があきすぎているので、つい笑ってしまうほどだ。
穴から落ちてくる雨が傘を見上げている私の顔にあたる。
「だよな。ごめん」
力なく言って、彼は、傘を引っ込めようとした。
その痩せた腕を掴んで私は、彼を見つめ
「ありがとう。無いよりはマシだよ」
と、礼を言った。
彼の落ちくぼんだ瞳が私を同情してる。
「振られたのか?」
「うん。しかも今までのデートで彼が出した私の分のお金を請求されたし、誕生日にくれた指輪を返せってまで言われた」
苦笑いしながら私は、ひょろリと背のたかい彼を見上げ
「これも、あんたのせい?」
と掴んだ彼の細くて骨ばった腕を強く揺すった。
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