プロローグ

1/2
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

プロローグ

突然降り出して来た雨。 恨めしく思って空を見上げたときに、さしかけられた黒い傘。 「濡れる」 「わかってる。でもさ、この傘じゃ意味ないから」 さしかけられた黒い傘は、大小様々な穴が沢山あいていた。 あまりに穴があきすぎているので、つい笑ってしまうほどだ。 穴から落ちてくる雨が傘を見上げている私の顔にあたる。 「だよな。ごめん」 力なく言って、彼は、傘を引っ込めようとした。 その痩せた腕を掴んで私は、彼を見つめ 「ありがとう。無いよりはマシだよ」 と、礼を言った。 彼の落ちくぼんだ瞳が私を同情してる。 「振られたのか?」 「うん。しかも今までのデートで彼が出した私の分のお金を請求されたし、誕生日にくれた指輪を返せってまで言われた」 苦笑いしながら私は、ひょろリと背のたかい彼を見上げ 「これも、あんたのせい?」 と掴んだ彼の細くて骨ばった腕を強く揺すった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!