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繭
Zがベッドの上で巨大な繭になっているのを見つけたのは、Zの妻だった。
Zはさほど大きな男ではなかったが、繭となると小さな象ほどもあるような巨大感があった。
すでに全身白い糸でぐるぐる巻きになっていて、まだわずかに湿り気を帯びているうちは透明感を保っていて、Zの顔かたちを辛うじて確認できたが、乾くと見えなくなった。
しかし、繭の中にいるのがZであることを妻は疑わなかった。このところ同じベッドで寝ることはなくなったとはいえ、何とはなしの気配は感じ取れたし、第一他の誰かだなどとはありえないことだ。
(巨大な毒虫)ではないんだ。
大学時代かなりの読書家で文学少女だった妻は、カフカの「変身」をもちろん読んでいた。
ある朝、目をさましたら自分が巨大な毒虫に変身していたという男の話だ。
それなりにある種の意外性と面白みを感じて読み通したが、変身することが一体どういう意味なのか、何を象徴しているのかといったことを考えたことは特になかった。
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