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「いつもだったらここに来ても見られる景色はたかが知れてる。今日みたいな特別イベントの時だから、ここを選んだ意味が有るんだからな」
カイリの反論は的を得ている――と、ナナクは思った。
今日は隣国の姫君がこちらの国に嫁入りにやって来る、その行進を民衆にお披露目する日だったからである。だからこそのこの眼下の賑わいと熱気なのだ。
「……じゃあその特別イベントに、他の女じゃなく私を誘ってくれたのね」
「ああ。ナナクが楽しそうにしてる顔を、この賑わってる上で見れたら良いなと思ったから」
ナナクの心がプラスの面へと傾きそうな気配を察したカイリは、更に彼女が喜びそうな言葉を掛ける。――俺はお前を他の女よりも特別視しているんだぜ。――と、敢えて露骨に伝わる位のレベルの言葉やつを。
こういう時は露骨で良い。こういう時に露骨に出来ない奴は男じゃない。
カイリはそういう風に考える男だった。
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