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「そっか。ならありがとね、カイリ」
ナナクはやや大人しめに、しかし微笑みながら言った。
「う、うん」
カイリは元々ナナクがもっと良い笑顔を見せてくれると踏んでいたから、肩透かしを食らったような微妙な受け答えをしてしまった。
ナナクがこの屋上に、自分が前に別の女を連れて来ていた事を見抜くとも思っていなかったからというのもあった。
――普段でも夜ならそこそこ良い景色でしょうに。特に、星空とか?――
ナナクは人が夜にもデートをする生き物だと勿論知っている。知っていて、そこは敢えて触れなかったのだ。
大人しめな返事をしたのもその考えが頭にチラついていたからだが、別に自分が股に掛けられている事はそれ程気にしていなかった。
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