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二人きりで高みの見物をする男女
普段見慣れた街並みだって上から見下ろせばまた違った味わいが心に広がる訳で。だからカイリはナナクを連れて家々の屋根を上手く伝い、特に見晴らしの良いこの大衆酒場の屋上へと来て正解だったと思っていたのだ。
「なあ、苦労してでもこっちに昇って来て良かったろ?」
ここは街の大通りに面しており、眼下には群がった民衆達の熱気が籠っている。それを感じながらもここには他に阻んでくる者の無い爽やかな風が吹く。
カイリは銀色の髪を揺らがせながら、ナナクに向けて自慢げに笑った。元々整った顔に自信の色を標準として付けている彼の、ここぞの笑顔は相手の心を撃つ程の効果を十分に発揮し得る。
だがしかし。
「そんなに慣れた感じなら、ここってカイリがよく使うデートスポットなのかなー」
ナナクはパン屋の娘に生まれ、その亜麻色のショートヘアは彼女が持つ色香と元気さの象徴として輝いている。こちらもまた、自信有りげに。
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