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入 門
午後の日差しが湘南の海を照らしている
窓側一番後ろの席は快適だ
でもちょっと暑い
ぼくは三年生になってようやく海の見える教室に当たった
一番前の席には檜原夏美がいる
彼女も海を眺めている
浜倉高校三年三組 杉下健
ぼくはいたって普通の男だ
何をやっても目立たない
リーダーになったためしもない
容姿も鼻筋が通っていると褒められたことがあるくらいで
二枚目とは言い難い。
髪も千円カットでちょちょっとカットしてもらうだけ
そんなぼくにちょっとした事件が起きた
原因は檜原夏美だ
才色兼備の元生徒会副会長
初めて彼女を見たとき
瞳がキラキラしているので驚いた
でも口と鼻は小さめだから
控えめで知的な印象も受ける
「可愛い」と「綺麗」を兼ね備えた感じだ
彼女は生まれつきどっかの臓器が悪いらしく
激しい運動ができない
だからか華奢な体つきをしている
そこへきて艶のある長い黒髪
ミステリアスな雰囲気を漂わせている彼女は
男どもを魅了するマドンナ的存在だ
ぼくの親友も彼女にまいっている
彼女は頭も良く授業の半分は窓の外を見ているけれども
授業などまともに聞かなくてもついていけるらしい
彼女は江ノ島のほうを見ているのかもしれないとぼくは思った
なぜならそこに彼女の好きな場所があるから
そのことをぼく以外の男は知らない
なんて
こんな風に書くとぼくが彼女のことを好きで
他の男どもに対して優越感を持っているみたいに聞こえるけれど
正直彼女はぼくのタイプではない
ぼくは華奢な女性よりは筋肉質の方を好む
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