入 門 

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一昨日(おととい)のことだ ぼくは父親と江ノ島に釣りに出かけた 腰越(こしごえ)の自宅から歩いて 国道から江ノ島に向かう弁天橋(べんてんばし)を渡っている時 数メートル先に檜原の姿が見えた 袋に入った棒のようなものを肩に(かつ)いでいる 檜原も釣りをやるのかと意外に思って見ていると 彼女は参道の方に向かっていった 釣り初心者ならそちらへ行くことはまずない よく見ると(かご)みたいな大きなバッグを左手に()げている あれでは(しお)にやられてしまう どうやら釣りではなさそうだった 「ちょっと用を思い出したから先に行ってて すぐに戻るから」 ぼくは父親に釣竿とクーラーバッグを預けて彼女のあとを追った なんで好きでもないのにそんなことをしたかといえば マサのせいだ マサはぼくの親友で彼女のことが好きだ 彼女のことについて知っていることがあれば なんでも自分に教えてくれと言われていた だからぼくはスパイのように彼女のあとを追って 手柄を立てるつもりだったのだ
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