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参道を抜けると朱の鳥居と
竜宮城を模したという楼門が見えてくる
檜原は躊躇なく階段を上っていった
(結構 速いな)
檜原は体が弱いという割には軽々と階段を上って行った
辺津宮を過ぎ中津宮も過ぎ
江ノ島の頂上部まで上った
このまま江ノ島の裏側まで行ってしまうのかと思っていると
檜原は灯台の方へ向かっていった
灯台の下にはサミュエルコッキング苑という洋風のガーデンがある
ここに入るのは初めてだ
見つからないように距離を置きながらついて行くと
(こんなところに?)
なぜか和風の建物があった
檜原はその中に入っていった
ぼくはここで尾行をやめて引き返そうと思ったけれど
建物の前にあった幟の文字が目に入って足を止めた
(そば?)
こんなところにそば屋があるのかと気になって近づいてみた
入口に「海風庵」という看板が掲げられてある
中を覗いてみた
そば屋にあるはずの椅子がなく
いくつかの台が並んでいた
檜原の「こんにちは」の声に
おじいさんたちがハリのある声であいさつを返していた
檜原は慣れた手つきで白い前掛けを腰に巻き
白い作務衣の上衣をまとった
そして白い帽子をかぶると 壁際の棚のところへ行って大きなこね鉢を取り 自分で運んで台に据えた
それから例の籠みたいなバッグから包丁や板などを出して 台の横の会議机に並べた
ぼくが釣竿だと思っていたものの正体は
木製ののし棒だった
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