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オリビアは辛抱強く少女の面倒を診て、毎晩着替えをさせ、湿布と包帯を取り替えた。その甲斐もあって、少女はみるみるうちに回復し、快方に向かっていった。
十日が過ぎた朝、窓から射し込むやわらかな春の陽気に包まれながら、穏やかな寝息をしていた少女は静かに目を開いた。
見たことがないほど広い部屋だった。ベッドはやわらかく、一人で使うにはとても大きい。家具やそこらじゅうに置かれた花瓶、絵画……いずれも骨董品ばかりで、少女にとっては立派な宝物に見える。
(ここは夢の世界? それとも、天国なの?)
体を起こすと、重い感覚と共に全身のあちこちが痛んだ。どうやら、これは現実らしい。
「まあ、起きたのね! 良かったわ!」
傍で花瓶の水を取り替えていたオリビアが少女の姿を見て喜び、同時に、目を奪われた。
深海を思わせるような、青い、二つの大きな瞳だ。アルドレアのどこを探してもここまで美しい瞳の持ち主はいないだろう。
「私はオリビア。あなたを助けたサイラスの妻よ」
オリビアは少女の顔を見て名乗るのを待ったが、少女は唇をぎゅっと結び、何も答えなかった。
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