プロローグ

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 昔、大陸には二つの大国があった。  南の平原地帯を治めるアルドレアと、北の山岳地帯を治めるカルツヴェルンである。  アルドレアは民と分け隔てなく暮らす、温和な王国だった。王は民から寄せられたほんの些細な問題でも直ぐに解決したため、王は人望が厚く、とても民に親しまれていた。  一方、カルツヴェルンは男性以上に女性が力を握る軍事国家だ。女性は貴族として扱われ、男性は奴隷か召使いとして扱われていたので、結婚という風習はまるでなかった。  カルツヴェルンを治めている女王は、魔道では禁じられている不老不死の黒魔術を追い求め、宮中には数えきれない程の黒魔術師が控えていた。そのため、男の奴隷たちが反乱を起こそうとしても、軽くねじ伏せるぐらいの力を持ち合わせていた。  ある時、アルドレアの北の国境付近にある鉱山から黒魔術に使われる鉱石が採掘されたことを知ったカルツヴェルン女王は、アルドレア王にそれを譲り渡すようにと挑戦的な手紙を送った。アルドレア王は女王の狡猾さを知っていたので、条件を出してこのように返した。  ──わざわざ争う必要などあるまい。黒魔術に使わないと誓えるのであれば、貿易協定を結ぼうではないか──     
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