プロローグ

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 女王は鼻で笑うと、形式張った丁寧な書面を書き、アルドレア王と協定を結ぶことを約束した。  ところが、北の国境で行われた調印式の日、カルツヴェルンの女戦士達は油断していたアルドレア王の兵達を急襲した。  女王は、慌てふためく王を嘲笑し、こう言い放ったのだ。 「こんな子供騙しにまんまと引っかかるとは、莫迦正直なエセ君主よの。貴様のような矮小国家と仲良く手を組むとでも思ったか。密偵を送り込む手間もいらぬ。力付くでねじ伏せてやろうぞ!!」  ひとたび女王が合図の手を振るうと、一斉に色とりどりの魔法が飛びかった。  呆然とする国王の前に側近の騎士達が立ちふさがって応戦したが、爆風に吹き飛ばされ、動かなくなる者も大勢いた。  アルドレア王は僅かな兵と共に何とか逃げ果せたが、追撃の手は緩まなかった。  女王が通る道にある町や村は道を拓くかのように焼かれ、犠牲はついに民にも及んだ。  国王は怒りと哀しみに打ち震えた。我が子のように抱えている民が、次々と死んでいくのだ。  生き延びた民は口を揃えて言った。 「陛下はお優しい御方ですが、甘すぎます! このままあの悪女に殺されるぐらいなら、国を守るためにこの命、遠慮なく差し出しましょう! どうかご決断を!」     
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