高校二年夏

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臆病者のレッテルを貼られるわけにはいかない。  「どんな洋館だろう。楽しみだな。」と強がりを言い麻美を後ろに乗せてH山へ向かうことになった。腰に手を回してくる麻美が少し震えてる気がしたがこれから行く洋館が怖いのか俺の運転が怖いのかはその時点では判断できなかった。  そもそも武士とはガソリンスタンドでのバイトが一緒で武士の中学からの友達の雄二と武の高校のクラスメイトの女の子たちはいつも一緒に遊ぶ仲間でそこに俺が混ざった形になる。他の5人は可もなく不可もない中堅より少し偏差値の高い高校に通い。運動が強い以外の形容詞がヤンキー高校の俺とは少々毛色が違う。別に俺は不良と言う訳ではなかったが髪を脱色して茶髪の地元でも有名な底辺の高校に通う男としてこのメンバー(特に女子)にはもの珍しがられていた。髪の脱色もクラスの友人に「茶髪のほうが女の子にモテルゾ」と言われてやったのだがまったくもてることはなかった。  女子三人のなかで一番おとなしそうな麻美と俺がペアになったのはバイクの関係から二択なのだが武士と優奈は付き合ってる、とまではいっていないがかなりいい感じらしい。まじめそうな麻美にとっては初対面の俺のバイクの後ろに乗るのもある意味肝試しだったことだろう。  H山につくと麓の公園バイクを止め件の洋館に向かうことにしたのだが、先についた雄二と美咲が「本当にここ。」と疑問をあげていた。ヘルメットを脱ぎ山道をみると普通のハイキングコースのようなところだった。一体なぜこんなところに家を建てたのだろう。いやそもそもどうやって建てたのだろう。知識の乏しい高校生ながら資材の搬入や重機どころか普通車も入れないような未舗装の狭い道だ。建材を抱えて登ったか。高圧線の鉄塔のようにヘリコプターで運んだのだろうか。まだみてもいない家だが普通以上にコストのかかった家であろうことは想像できる。  二人で一つの懐中電灯をもち山道に入っていくと下が土のせいか少し涼しく感じる。いや涼しいというよりちょっと肌寒いくらいだ。  向かう道すがら誰とはなしに百物語の様相となってきた。
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