高校二年夏

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「じゃあ俺たちは一階の奥から探索してくる。」と武士、優奈組が行くと「俺たちは食堂のほういくわ。」と雄二、美咲組がさっさと消えていった。女の子の前でかっこつけるのも肝試しの醍醐味である。  「俺たちは二階探検しようか。」と麻美に声をかけると「うん」と言って普通に手をつないできた。ドキっとしたがその手が微かに震えているのを感じやはり相当怖いのを我慢しながら着いてきているのがわかった。  階段の手すりを触っても埃が付かないところを見ると結構な頻度で掃除しているようなので誰か管理人のような人がいるのではと勘ぐってしまう。そうなると割ってしまった窓が気に係りはじめたが。二階に上るとそんな気持ちも吹っ飛んでしまう。街明かりのまったく届かない屋敷の廊下は懐中電灯で照らした場所以外は完全なる闇だ。黒のなかでも漆黒の塊があたりの空気を押しつぶしている。その中を歩いていると闇に自分が同化していく錯覚を覚える。となりの麻美が距離を詰めてくるのが唯一の救いではあるがさっさと終わらせて帰りたい気持ちのほうが勝っている。  下の二組はなにしているのか物音一つ聞こえない。いやあまりにも静か過ぎる。横をみると麻美が手ではなく腕をつかんできている。ここではさすがに弱音を吐くわけにはいかない。  「ねえ、全部の部屋見なくてもいいからもう戻らない?この家さ、空き家って言う割には綺麗過ぎないかな。もしかしてたまたま誰もいないだけで実はだれか住んでるってことはないのかな。そうしたらこれって不法侵入だよね。」  住んでいなくても不法侵入していることには間違いないのだが、さっさと戻って臆病者呼ばわりされるのもの癪に障る。  「あともう少しだけ探検してみよう。まだどの部屋も見ていないし。」  「私どうしてもここに誰も住んでいないって感じがしないの。うまく説明できないけど人が暮らしている雰囲気というか、なにか腑に落ちないの。」  「気のせいだよ。とりあえず部屋見てみようよ。」
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