第一章

2/8
前へ
/28ページ
次へ
「じゃっ、よろしくな!」 そう言って、渡辺くんはいつも通りぼくにほうきを押しつけてきた。 「あ、あの!」 そのまま帰ろうとする渡辺くんを、ぼくはほうきの柄をにぎりしめて呼び止める。いつも、ここまでは言えるのだ。 「はあ?」 でも、眉をしかめて振り返った渡辺くんに、それ以上何も言えなくなった。 「あ……、な、なんでもない」 これもいつものこと。渡辺くんは「あっそ」とだけ言って背を向け、他の友達に「おまたせー」と声をかけて走っていく。 放課後の教室には、ぼく一人だけが残された。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加