第一章

3/8
前へ
/28ページ
次へ
「あー、もう!」 足音を立てて昇降口を出る。授業は早く終わったはずなのに、あたりはすっかり暗くなっていた。 今月に入ってからずっと、渡辺くんがやるはずの放課後の掃き掃除を押しつけられているからだった。 ぼくの名前は田代 豊。特徴を挙げると全てコンプレックスになってしまうような小学五年生だ。 勉強も運動もそこそこで、ものすごくデブって訳ではないけど小さい頃から小太りで、性格は気弱。 だからといっていじめられてはいなかったし、友達も何人かはいる。 特に大きな悩みもなかった。 けど、渡辺くんから毎回放課後の掃き掃除を押しつけられてからぼくは学校に行くのが憂鬱になっていた。 渡辺くんは声が大きくて友達が多いけど、別にいじめっ子じゃない。たくさんいる友達を使って仲間外れを作ったりしないし、ぶつかったら謝ってくれる。 話が合うとも思えないけど、嫌なヤツだとも思わない。 渡辺くんが掃除を押しつけてくるようになったのは二週間前のことだった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加