第一章

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「昨日の放課後、このクラスの教室の窓ガラスが割れていました。犯人はもうわかっています。立ちなさい」 朝の会で担任の南先生が言った。どよめきが起こると共に気だるそうに立ち上がったのは渡辺くんだった。 「昨日の内に家庭訪問を済ませてあります。けど理由については何も話してくれなかったわね。何か言いたいことはあるかしら?」 「…………」 渡辺くんはしばらく黙った後、「すみませんでした」と言って頭を下げた。 先生はため息をつく。 「見つかった時、すぐに『自分がやりました』と言えたのと、今日みんなの前で謝るって申し出てくれたのを考慮して、これ以上のお説教はしません。ただし昨日も言った通り、ガラスを割るのは器物損壊といって罪になるの。それに誰かがケガをする危険性もあるわ。ご両親とも話し合って、今日から一ヶ月間、放課後掃き掃除をしてもらいます」 「……はい」 渡辺くんはそう言って着席した。 ぼくたちのクラスの教室は二階にあるから、割れたガラスが下に落ちたら危ない。 わんぱくだし授業中ふざけたりはする渡辺くんだけど、そこまで危ないことをするなんて。
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