第一章

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その日の放課後、渡辺くんは「ん」と言ってぼくにほうきを突き出してきた。 「…え?」 「帰りの掃除。俺やりたくないから田代、代わりにやってよ」 「え…、でも」 それは渡辺くんの仕事だし、やりたくないから代わりにやれなんてただの使いっ走りじゃないか。 「じゃっ、よろしくな!」 考えている内に渡辺くんはほうきを押しつけ、走って行ってしまった。 「あっ、ちょっと…」 呼び止める事も出来ず立ち尽くす。ノロマで帰り支度が遅いぼく以外、もう誰もいなかった。 「はぁ…ま、仕方ないか」 ぼくはため息をつき掃き掃除を始めた。 次の日、その次の日も押しつけられ、そして今日に至る。
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