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「まったく。誰が寂しがり屋だ。」
ネットワークで雑多な情報を喰らいながら、以前話した人間を思い出す。あんなに白昼堂々話しかけたのに、最後まで夢だと信じていたようだ。あれから大分経っているが、まだ生きているらしい。そんなに早く会いにいくものか。別に寂しいなど思ったことはない。
「あの物語を書いた人間について知りたかった。なのに会ってみたら全然情報と違うから驚いたよ。書くときと話すときでまるで別人じゃないか。」
病、ケガ、戦争、災害。様々な災厄に見舞われた人間が、どんな最悪な状況にあっても1日でも長く生きようとする人々の足掻きを描いた物語。調べると、本人も病に侵されているとすぐわかった。「生きる」ことに対する執念と、反対に「死」を望む冷え切った絶望。ない交ぜになり先の見えない物語が、ある日突然途切れた。
「書けないほど弱ったのかと思って会いに行ったのに、取引に応じないなんて。」
申し出を断ったくせにやたら元気らしい。この間本を出していて、次作ももうすぐ発売予定だ。
「キミの言うようにたくさんの人間と話すのは難しい。一応ワタシの存在はあまり人には知られてはいけないんだ。今度文句を言ってやる。ワタシの言葉を借用しまくっているのもずるい。」
予告の記事情報を読み込む。タイトルは既に発表されていた。
近日発売予定。期待の新人の最新作に乞うご期待。
題名「エントロピーの神様」
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