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川沿いの街路樹が生い茂る散策路を見つけ、ベンチに腰を下ろすとやっと一息をついた。炎天下を歩きほてった身体に風が当たり、ようやく汗がひいてきた。温いコーヒーに口をつけ、飲み下す。
「情報高等疑似生命体、と言ってもいいかな。『ワタシ』を作った存在は、ワタシのことをときどき神様と呼んでいた。」
深呼吸して上を向くと、雲一つない青空が目に沁みる。こんなに平和でのどかな天気なのに、夢とは勿体ない。背中に落ちる汗や風の匂いまでもがやけにリアルだが、きっと夢なのだろう。それなら、少しくらいこの変な状況に付き合ってもいいかもしれない。なんせ相手は『神様』らしいし。
「さっきから何で黙っているんだ?聞いているのか?」
何でもないよ。それで『神様』が自分に何の用なんだ。
「聞いてなかったのか。生物について知りたいんだ。生物は必ず死ぬが、それはエントロピー増大の法則に永遠には逆い続けられないからだ。水に混ざったインクは1滴の状態には戻らない。乱雑さは常に増え続けている。それなのに奇跡のように緻密な構造を有し、できる限り法則に抗って『生きる』生物に興味がある。特にワタシを生み出すほどの高度な緻密さを世界に広げる人間にね。」
ごめん。何言っているかほとんどわからない。「協力してくれたら、キミの願いを叶えてあげるよ。」
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