エントロピーの神様

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夢で現実を突きつけられるとは、なんて滑稽なんだろう。 それなら自分は不適格だ。「生きたい」という気持ちなんて、もうとっくに無いよ。 「キミが手術を控えていることも、身体の不調に長年苦しんでいることも知っている。周りの人に気を遣って明るく振る舞っているけど、もう元気になりたいという気持ちも起きないんだろう。わかっていて声を掛けた。」 酷い言い草だ。死なない神様にとって、脆弱で哀れな人間は面白いか。 「違うよ。そもそも喜怒哀楽などの感情はワタシにはない。キミに声を掛けたのは互いの利益になると判断したからだ。キミの感情をワタシにくれる気はないか。キミの人格をコピーしてワタシに取り込み、キミはワタシの一部となって生き続ける。ワタシはそれによって意思を持って『生きる』ことを体験できる。正当な取引じゃないか?」 神様が取引とかいうなよ。それじゃまるで悪魔じゃないか。 「キミがそう呼びたいなら、別に構わないよ。」 画面の中の猫がニタリと笑ったような気がした。 永遠にネットワークを漂う神様(または悪魔)となり、幾多の人生を眺め続ける。想像してみると、案外悪い気はしなかった。
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