エントロピーの神様

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「ワタシに寂しいとか、羨ましいという感情はないよ。」 そうかな。 「でも、キミにその気がないのはわかった。」 よかったらまた来るといい。申し出を受ける気はないけど、生きている内なら話相手くらいにはなるよ。 「それに何か意味があるのか?あとで考えが変わるかもしれないってこと?」 違うよ。人間っていうのは、利害関係なんかなくても友達とは話したくなるものだ。 感情が知りたいなら、人を取り込むなんて必要ないんじゃないか。人間だって他人の心は一生わからない。君が「人間の感情を知りたい」と思ったなら、それは君自身の感情だ。人間と同じではなくたって、大事な君の意思だ。君は君としてそのままで、人間とたくさん話して感情を育てればいいんじゃないのかな。そうすればきっと寂しくない。 「‥‥‥。キミを取り込んだら、退屈しないはずだったのに。人間は難しい。」 なんだか本当の猫みたいに見えてきた。ちょっと高飛車でわがままな高貴な猫。 「ワタシはネットワーク上にしか住めない。人間が繁栄している間は不死だが、永遠という訳ではない。だからキミに心配されるように寂しくなるなんてないよ。進歩がないと退屈なだけだ。キミと話せたのは収穫だったよ。ありがとう。」 退屈は辛いからな。こちらこそ楽しかったよ。
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