エントロピーの神様

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スマホの画面が黒く塗りつぶされる。 壊れたか?と焦るが、すぐにホーム画面へ戻ったのでほっと胸をなでおろした。 変な白昼夢だったな。 しばらく涼しい風に当たったおかげか、シャツを貼りつかせていた汗も引いていた。体調は最高ではないけれど、コーヒーを買ったときより随分不快感は消えている。 神様の御利益かな。 流れる白い雲に、猫の顔のような形を見つけて忍び笑いをもらす。変に人懐っこくて、自分勝手だったけど、案外神様ってあんなものなのかもな。寂しがり屋に見えるのに絶対認めようとしないのが可笑しかった。 そう言えば、どうして自分に声を掛けたのだろう。 病気だったり神様に助けを求めたい人なんて、いくらでも居るだろうに。 まあ夢なら関係ないか。 勢いをつけて立ち上がり、うんと背伸びをする。 寂しがり屋な神様のために、頑張って長生きしてみようかと漠然と思った。
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