きさらぎ行きの電車に乗って③

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そうだ。この電車に乗っている人達は、全員稚拙なのだ。 自分の死を受け入れることができないから、こうしてこの電車で揺られている。 小さな子供なら無理もない。 俺の場合は、ある日突然この電車で揺られていた。 俺には、家族が居たはずだ。 俺は、結婚していたが、その嫁とは2年で破局。そして、次の年に新たな出会いがあり、結婚。その女性には、すでに3人の子供が居たが、俺は子供好き、3人の子供たちとうまくやっていく自信はあった。 幸せな毎日だった。子供たちも、パパ、パパと懐いてくれていた。 そんな幸せな生活にも、暗い影を落とす者が居た。 隣人の根暗な独身男だった。 子供も増えたので、家を改装することになり、隣にもあいさつに行ってご迷惑をかけますと言ったにもかかわらず、隣人の男は、改装の音がうるさい、子供の遊ぶ声がうるさいと度々、我が家を訪れて苦言を言うようになった。 その度に俺は、もう少しだから待ってくれとさんざん頭を下げたにもかかわらず、その男の行動は次第にエスカレートして行ったのだ。 俺が仕事中に、妻に詰め寄ったり、子供を大声で注意して泣かすなどということもあり、俺は危険を感じて、その男に直接抗議しに行ったのだ。 俺の記憶にあるのは、そこまでだった。     
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