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6話 ゾンビ
僕は、命からがら逃げた。
何処までも、何処までも走っていた。
何から逃げてるって?ゾンビだよ!ゾンビ!
死んでもなお、人肉を貪り喰らうあれだよ。
いつから発症したのか分からない。
分かっているのは、間違いなく人よりゾンビの方が多いと言う事だ。
そして僕は、ある町にたどり着いた。
すると、ある教会に入る人影を見たのだ。
僕はそっと、扉を開けた。
「人間か?」突然、痩せ細ったしわくちゃのお婆さんが現れた。
「う、うわあーっ!出たー!」僕はそばにあったホウキで、何度も何度も叩いた。
「こ、くおらぁー!止めんか!わしは人間じゃ」
倒れていたお婆さんが、ゆっくりと立ち上がった。
「え?本当ですか?」僕はお婆さんをマジマジと見た。
「どう見ても人間じゃろが、全く!死ぬとこじゃったわい」
僕は謝った。「すみません。ゾンビの親玉だと」
「誰が親玉じゃ!」
そしてお婆さんが話してくれた。「この辺はゾンビだらけじゃ。若いもんはもうおらん。年寄りばかりが、ここに隠れておるのじゃ」
「そうなんですか。僕も何が何だかさっぱり」と途方に暮れていた。
「せっかくじゃ、お前さんもここに隠れるといい。ここは安全じゃて」そしてお婆さんは、地下へ案内してくれた。
そこは、本当に年寄りばかりだった。
「ほれ、この婆は今年102歳の長老じゃ」と椅子に座る老婆を紹介した。
ゾンビじゃないの?ある意味、ゾンビより怖かった。
「何せ、20人いるが皆んな80歳以上じゃ。逃げることもできん」
カチリッ。後ろでドアの鍵が閉まる音がした。
僕がはっと振り向くと「このままでは、人類は滅亡じゃ。そこで子孫を残す事にした」と先程のお婆さんが笑っていた。
「へっ?」僕は嫌な予感がした。
「お前なら、20人相手でも大丈夫じゃろう」とお婆さんは僕の手を握った。
「えー?冗談はやめて下さいよ」僕は慌てて、手を振りほどいた。すると、後ろにいた別の老婆に抱きしめられた。
「久しぶりじゃ、若い男はのう。ふぇふぇっ」歯のない口元が笑った。
「ぎゃあー誰か!助けてー!」僕は叫んだ。
「地下だから誰にも聞こえんて。まあ、人はおらんがな」老婆はスカートを下ろした。
「嫌だー!ゾンビは?ゾンビはいないのかよ!」
僕はゾンビに助けを求めた。
僕は何から逃げればいいんだよ!
終わり
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