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すると突然、発作に見舞われた。「うっ!くうっ!」僕は、救急車を呼ぼうと手を伸ばしたが、電話に手が届かない。駄目だ。力が入らない。
パトラッシュ、僕は先に行くよ。今までありがとうな。遠のく意識の中で、パトラッシュが立ち上がっていた。そして意識がなくなった。
目が覚めると病室だった。何とか一命を取り留めたようだ。近所のキヨコさんが顔を出した。
彼女は僕より5つ下だ。
「良かったよ。無事で」キヨコは胸を撫で下ろした。「あなたが僕を?」とお礼を言おうとした時
「パトちゃんのお陰だよ。本当に」とキヨコが言った。
パトラッシュは、よれよれの体を引きずって、近所を何軒も走り回ったそうだ。その時、たまたまキヨコが居合わせて、119番したという訳だ。
「じゃあパトラッシュが…」
動き回れる体じゃ無かったのに。
僕は、年甲斐もなく泣いていた。
「パトちゃんは、私ん家で面倒見てるから、ゆっくり治して帰っておいで」
キヨコはバンと自分の胸を叩き、1人でむせていた。
ありがとう、キヨコさん。
ありがとう、パトラッシュ。
退院して、パトラッシュとの生活がまた始まった。
今度は、ぼくがお前を助けるからな。
パトラッシュの顔を見つめながら、体をさすった。
パトラッシュは気持ちよさそうに、ただ目を閉じていた。
終わり
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