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「私は16歳の時、家族旅行で海に遊びに行ったの。そこで誤って溺れた私を、助けてくれたのがあなただった。波は荒れていて、人を抱きかかえて助けるのは困難だったと聞かされたわ。
そして目が醒めると、私は病院のベッドだった。2日間意識が無かったとの事だった。私はすぐにでも、あなたにお礼が言いたいと、お母さんに言ったわ。
でもあなたは亡くなったと聞かされて…ごめんなさい。それから度々、写真に知らない男性が写り込むようになって。
今、祈祷師の方にその話をしたの。
死に際に関わると、守護霊となって憑く事がたまにあるそうよ。それがあなただった。あなたは私を、守っていてくれたのね。ありがとう」
僕はポケットから、写真を取り出した。
全ての写真から、僕の姿が消えていた。そんな…
ただ、中学の修学旅行、マコトとの写真だけは、消えずに写っていた。
そうだ。僕は思い出した。
この写真を撮った次の日に、海で溺れている彼女を見つけたのだ。
僕はその時は、まだ生きていたんだ。
僕は、彼女を見つめ返した。
「僕の事を、ずっと思っていてくれたんだね。本当にありがとう」
そして僕の意識は、遠い昔の中に消えていった。
1人残った彼女は、写真を握りしめたまま、ただ泣いていた。
終わり
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