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10話 陽だまりの君へ
思い出は偶然に、まるで写真が切り取られるかの様に、君を見つめている。
いつから意識したんだろう?
放課後の君は、木陰で好きな本を楽しんでいる。
風が心地よく、肩まで伸びた、君の長い髪を揺らしていた。
僕は勇気を出して、君に声をかけた。
それは、君を学校で初めて知ってから、そう1年が経っていた。
そんな1年掛かりの告白に、君は笑って応えてくれた。
待ち合わせした並木道。
帰り道、2人でジュースを分け合った。
映画はたまの贅沢で、決まって君はポップコーン。
好きな歌はいつも鼻歌で、ラブストーリーの結末に、いつも文句を言っていた。
君が笑うといつだって、陽だまりにいるみたいで、
毎日が素晴らしかった。
明日も君に会えるという喜び、そして、それに代わる物など何もなかった。
でも、それは突然やって来た。
君の転校を先生に知らされた朝、僕は授業をさぼって、彼女の家に行った。
もう誰も住んでいないポストに、手紙があった。
僕宛だ。
" ごめんなさい。黙って行ってごめんなさい。
辛くなるから、ごめんなさい "
それも今は遠い、過去の話だ。
大人になった今でも、たまに君を思い出す。
今頃、君はどうしているのだろう?
離れなかったら、どうなっていたんだろう?
あの頃の君に、問いかけて見る。
たまに、話しかけてみたくなるんだ。
そう、陽だまりの君へ。
終わり
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