2話 瓜ふたつ

1/1
前へ
/19ページ
次へ

2話 瓜ふたつ

僕たちはよく、瓜ふたつだねと言われる。 双子ではない。まして兄弟や親戚でもない。 小学校5年の時、彼が転校して来た。 彼の名前はマサハル君といった。 余りに似ていると怖くなるが、僕らはそれを通り越して、親友のように気心が知れた。何かにつけて、いつも一緒だった。 友達や先生、親にだって入れ替わっても気づかれなかった。またそれが面白かった。 ある日、マサハル君が「今日一晩だけ入れ替わらない?晩御飯、ママの誕生日でご馳走なんだ」そう言ってきた。 「ええ?そうなの?」うちは貧乏だから、マサハル君が羨ましかった。 「でも、いいのかなあ?」僕は少し、遠慮がちに聞いた。 マサハル君は、少し黙ってから「いいんだよ。友達なんだから」と笑った。 僕はマサハル君の部屋に1人で入った。「うわーすげーなあ。これ新しく出たゲームだ!」とあれこれ見て回った。すると「マサハル、ご飯よ」と下でおばさんが呼んだ。 「はーい」僕は、食卓のテーブルに腰掛けた。 おじさんと3人だ。料理は凄く美味しそうだった。 「さあ、食べましょう。最後の食事なんだから」とおばさんが言った。 どう言う意味か分からなかったけど、どれも美味しかった。 すると、あれ?なんだか…眠く…、僕は箸を落として、椅子から転げ落ちた。 「ごめんね。ごめんね」おばさんは何度も言っていた。そしてそのまま、意識が無くなった。 眼が覚めると、僕は病院のベッドの上だった。 お母さんに聞くと、マサハル君のお父さんが事業に失敗して、沢山の借金ができたらしい。親戚を渡り歩いたが、もう限界だったそうだ。 無理心中だったらしい。 幸いにも、誰も死ななかった。 それから間もなく、マサハル君は転校した。 家族で一からやり直すとの事だ。 でも、この話は誰にも言っていない。 マサハル君は、こうなると分かっていて僕と入れ替わったんだ。 僕は、なんだかマサハル君が怖くなってきた。 これはずっと、僕だけの秘密だ。 終わり
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加