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矢継ぎ早の問いに戸惑いながら、私は自分の身に起きたことを残らず説明した。それにスタッフさんが首を傾げる。
「他のスタッフが駆けつけたんですか? 一番近くにいた俺より早く? そんな筈は…。それに、ずっと非常通路を歩かされたんですよね?
確かにスタッフ用通路は裏で全部繋がってますけど、ギブアップのお客さんは一番近くの非常口から退室してもらうので、そこまでの移動はないですよ」
その後、実際にそこから外へ出させてもらったが、確かにスタッフさんの言う通り移動距離は短く、退室時間は二分とかからなかった。
もしかしたら、ギブアップのシステムを知っている不審者が、スタッフのフリをして私をどこから連れ出そうとしたのかもしれない。
そう考えたスタッフさんが他のスタッフに連絡を取り、施設内をくまなく4チェックすると同時に、ギブアップシステムを改善するという話になったが、その後は、私達に丁重なお詫びとアトラクションの料金払い戻しが行われてご退室となったため、今後アトラクションがどう継続していくのかの詳細は判らない。
とりあえず私は、怖い思いはしたけれど、実害はほぼなかったということで、友達二人に心配されながらも自身は平静でいられたけれど、それでも、私を通路に引っ張っていったのはいったい何ものだったのかと考えずにはいられない。
不審者だったとしても嫌だけど、あの、時間が経てば経つ程冷たさの増した凍える手。あの手の持ち主が生身の人間だと思えないから、もしやの疑念が拭えない。
あのままあの手の主をスタッフだと思い込み、誘導されるがままについて行っていたら、私はどうなっていたのだろう。
この考えはきっとトラウマになるだろうから、私は今後、この手のホラーアトラクションには入るどころか近づくことすらできなくなりそうだ。
ホラーアトラクションの怪…完
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