ホラーアトラクションの怪

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ホラーアトラクションの怪

 期間限定で開催されている、遊園地のホラーアトラクション。  ともかく怖いと評判で、私も友達二人と一緒にアトラクションに臨んだのだけれど、これが噂に違わず本当に怖い。  それでも三人で固まり、少しずつ前進していたのだが、途中の仕掛けで友達の一人がパニックになり、悲鳴を上げながら駆け出してしまった。  慌てて私ともう一人で後を追ったが、何しろホラー系のアトラクションなので辺りが暗く、簡単には進めないよう、通路自体が迷うような造りになっている部分もある。そのため途中で一緒にいた友達ともはぐれてしまい、私はアトラクション施設の中で一人きりになった。  二人の名前を呼んでみるが返事はない。声が届く範囲にはいないようだ。  怖いけれどこのまま一人でアトラクションを突破するしかないのだろうか。そんな悲壮な気持になった私の意識に、アトラクションに入る際、スタッフが言っていた言葉が甦った。 「とても怖いアトラクションなので、どうしてもクリアができず、途中でリタイアしたくなったら、大声で『ギブアップ』と叫んで下さい。近くに配置されているスタッフがすぐ現場に向かい、非常通路を使っての脱出が可能です」  そういえばリタイアできるんだった。三人ならクリアできたかもしれないけれど、一人では絶対無理。すぐにギブアップしてスタッフに助けに来てもらおう。 「ギブアップします!」  大声で叫び、その場に立ち尽くしていると、ふいに誰かが私の背中に触れた。振り返る暇もなく手を取られ、非常通路らしき暗がりに引き込まれる。  ギブアップするくらい怖がっている相手に、大丈夫か尋ねるとかはしないのかな。あるいは、下手に話しかけると泣き出したり喚いたりして、非常通路に入ってもその声がアトラクションに響くから、あえて無言で早々に退室誘導をする、とかなのかも。  対応の不愛想さに若干戸惑いながらも、誘導されるままに相手について行く。その途中で私はあることに気がついた。
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