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「ほとんどゼロに近い。かもしれないって事は、起こるかもしれないけど分からないって事でしょ?私達は自分の体の中の事も解明できてないのに、宇宙規模の話なんてあてにならないわよ」
悪戯を仕掛けた少女のような、そんな雰囲気で語る彼女の言葉は、きっと僕に向けれれているのだろう。今この空間には僕ら二人ぼっちなのだから。
時々、彼女の言葉は誰にも向けられていない独り言に感じとれて、その声も、仕草も、抑揚も、感情も、全てがこの世のに一人しかいないような、まるで僕自身すらも透明に消えてしまったかのように感じる時がある。
いつかそれを彼女に話したら、何も言わずに、ただ、優しく微笑んでいた気がする。
「でも、終わりって緩やかに、唐突に、なんでも無いことのようにやって来るのよ。事務的に淡々とスケジュールをこなすようにね。私達はいつも、それを見ないように過ごしてるだけ。…宿題をやってない八月の最後みたいにね」
不意に生々しい磯の香りが鼻腔を刺激する。
いや、きっとずっと最初からこの匂いはしていたんだろうけど、そんな事も感じないままに、視覚と聴覚だけが過敏で、見えるものと聞こえるものを、取りこぼさないようにしていたんだろう。
だからこの体中の筋肉をうっすらと走る毒のような奔流の正体は分からない。分からない。
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