プロローグ

6/6
前へ
/24ページ
次へ
四歩半の僕らの間を浜風が通り抜けて、流された彼女の髪の隙間から漏れる光が、万華鏡のようにキラキラと鮮やかで。 タイムマシンが、もし、あるのならば。 きっと、僕はこの瞬間に何度も帰りたくなるのだろう。そんな気がするんだ。 それほどにまでに僕はその瞬間に魅せられていた。これは写真にも、SNSに投稿もしない僕だけの世界の出来事。 こんな景色をこの先何度見れるのだろうか? どこでもないここに今僕らがいる。 それだけの事でしかないけど、なぜだか忘れてはいけない気がした。 いつかはいろんな思い出も、見て来た景色も、やりきれない出来事も、覆い隠した痛みも忘れてしまうのかもしれない、脳の限界と寿命は、僕が大人になるにつれて少しずつ、この星の最後のように迫ってくるだろう。 それでも覚えていたいんだ。 そういえば、昔から疑問だったことが一つある。 未来や過去は安易に想像できるが、今っていうのはいつを指すのだろうか? そんな疑問。 その答えは目の前で視線向ける彼女が示しているのかもしれない。 今この時、現在、瞬間、それを確かに感じたんだ。  
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加