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そして、その裾からは自らの、何も身につけていない素足が彼の手に触れられている。
この状況が、アリシアにはどこかはしたなく思え、それと同時にじわじわと恥ずかしさが湧き上がって来る。
(う、わわわ……)
今、自分に触れているのは、メイドでも、自分と同じ女でもなく、間違いなく“男性”であることに今更ながら気付いたとでも言おうか。
自分の目の前に居るのは、身分も容姿も端麗な完璧な若き公爵様。
騎士の礼服に身を包んだユーリは、息を呑むほど様になっている。まるでおとぎ話の王子様のようだ。彼は王位継承をする気はないので臣下に下っているが、元王子であり、王弟であるのは間違いない。
その彼が触れているのが、他の誰でも無く自分であると言うこと。そして、今ふたりはこの狭い部屋に二人きりだと言うこと。
そういったことを考えてしまえばしまうほど、彼を男として意識させられてしまい、アリシアは動揺する。
「……じゃあ、少し歩ける? もう、君の存在を知らしめる効果は充分だろうから、帰ろうか? 送るよ」
そう言って、ユーリが顔を上げ、アリシアを見上げた頃には、彼女の顔は先ほどよりも熱く、熟れたトマトのように真っ赤に染まっていた。
「……アリシア?」
「――っ!」
先ほどまでは、普通に会話していた。
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