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1.亡国の日
砂埃の舞う豪奢な装飾が施されたその部屋は、不自然な程に静かだった。
大きく開け放れたままの重厚な扉と、無残に硝子を割られた天面近くにある明かりとりの窓からは、時折甲高く不気味な音をたてて風が吹き込んでいる。
美しく重厚な雰囲気であったはずの、かつての広々とした空間には、折れた木片や割れた硝子が飛び散り、部屋の壁に掛けられていたはずの著名な名画や、あるべきはずの美しい装飾品の幾つかが消えているように思える。
だが、正直、今はそんなことは大した問題では無かった。その部屋には、他に勝るものの無い唯一特別な者が座す椅子が最奥にあるのだ。
この国の根幹であり、幾人もの国主や王が座して政を取り仕切り、何百年もの間、この国のこの場所にあったそれは……
紅い天鵞絨を座面に張り、細やかな細工で金の装飾を施されたいかにも重厚な造りのそれは『玉座』である。
その玉座に、今、凭れかかるように力無く座る壮年の男。その顔には不自然なほどに血の気が無い。
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