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第2音楽室の入り口は開いており、ピアノの音がちょうど廊下まで響き渡っていたのです。
渉夢はこっそり、中をのぞき込みます。すると、彼女は第2音楽室にいた黒髪のロングヘアの先輩女子高生を見て、真っ青な表情になりました。
そんな渉夢に気付くことなく、ピアノを弾くことに集中していた先輩女子高生の名は夕葉未莉です。
渉夢は先輩の未莉のことが苦手でした。理由は、彼女が中学2年のときです。出身中学と入っていた部活も未莉と一緒であり、陸上部でした。
未莉は陸上部の部長であり、渉夢に厳しく、他の部員の倍、短距離走や走り幅跳びの練習をやらされた経験があったからです。
あまりの練習のきつさで陸上部をやめた渉夢は、何もかもやる気をなくし、家の外に一時期出られなくなってしまったほどの不登校に悩まされます。
渉夢を心配した担任の先生や、友だちが何人か彼女の家まで訪問し、暖かく励ましてもらったおかげで中学3年になるまでは、クラスの教室に戻れました。
ただ、陸上部に戻らず、吹奏楽部に入部を変更し、そのあとは中学校生活を無事に送れたのでした。そして、高校に進学してからも、吹奏楽部に入部した渉夢です。
中学2年以来、そんなに会っていなかった先輩とここで再会し、第2音楽室の入り口で渉夢の手足は震えていました。
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