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「そうだよね。空とシャープの月がさっきの場所にいたときと同じだもんね」
「ねえ、渉夢、あたしたち、いつ元の世界に帰れると思う?」
「先輩を見つけてすぐだよ」
「先輩、見つかるのもいつになる?」
「それは……」
渉夢は言葉を詰まらせました。そして、このまま黙ってしまいます。この先、先輩の未莉が見つからず、元の世界に帰れないのではないかと不安になったのでした。
そんな気持ちに渉夢たちがなっていたとき、遠くから心地良い歌声が聞こえます。
「あっちから聞こえる」
クログーは耳をぴんとすませたあと、歌声のする方へ走り出しました。渉夢もクログーのあとに付いて行きます。
渉夢たちはまるで、パンでできているような花畑を通り過ぎ、人通りが多い道に出ました。そして、人が集まっているところまでたどり着きます。
しかし、人や、しかも動物たちまで集まっていたため、前がまったく見えません。
「ここからじゃ、歌っている人たちが見えない」
「どうしましょう」
渉夢がクログーと困っていると、
「良かったら、背中を貸しましょうか?」
と、声を掛けてくれた者がいました。
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