何かいる!

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 色葉は首をすくめて、目もギュッと閉じて、本の影に隠れようとした。最近の辻くんは妙に勘が鋭くて、どんなにこっそりみていても、すぐに気が付かれてしまうのだ。  そーっと目を開けると、 (あれ? いない……?)  色葉は本の上から目だけをのぞかせて、キョロキョロと瞳だけで辻くんを探した。 「何、読んでるんだー?」  いつの間にか色葉の後ろに回り込んでいた辻くんが、色葉の持っていた本をシュッと抜き取った。 「あ、あー! 返してー!」  色葉は抗議したが、辻くんは困って手を伸ばす色葉をじっと見ながら、笑って本を上に上げてしまった。身長150センチしかない色葉では、175センチもある辻くんに手を上げられてしまったら、まさにお手上げ状態だ。 「だから。今、見てたでしょー?」 (きゃー! 恥ずかしい! 言わないでよー。皆に誤解されちゃうじゃない!)  色葉は真っ赤になって「いやいや、だって辻くん、最近、なんか変じゃない?」と、思わず口走ってしまった。 (って、あー! うっかり本音を言ってしまった……)  色葉が自分の失態(しったい)に、うろたえていると、辻くんは少しかがんで、色葉の目を間近でのぞき込んできた。  (ヤバい。これはヤバい)  自分の心臓の音と、ヤバい、という心の声の二重奏が、色葉の頭の中でぐわんぐわん鳴り響く。
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