「涙」 アイドルファン残酷物語

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そんなご主人様が恋をしました。 今までもご主人様が女の子を好きになったことは何度もあったそうです。 だけど、キモオタデブと呼ばれていたご主人様を好きになってくれる女の子はいませんでした。 話しかけてくれる女の子さえ、いなかったのだそうです。 きっと、嫌われるばかりのご主人様は気持ちを打ち明けることも、言葉を掛けることも許されなかったのでしょう…… ご主人様の恋は、ブラウン管の向こうの華やかなステージの上で歌って踊っている沢山の女の子。 その中の一人でした。 彼女は生まれて初めて自分の手を嫌がらずに握ってくれた、自分の名前を呼んで楽しそうに話しかけてくれたのだと、ご主人様は泣きながら私に何度も繰り返し教えてくれました。 私も嬉しかった。 ご主人様がこんなに幸せそうな顔をしているのを見たのは初めてのことでした。 どうか、ご主人様がこの人と幸せになれますように……。 そう思ったとき、何故か胸がチクリと痛みました。 えっ……何故? 私はその痛みが一体何なのか、そのときは分かりませんでした。 ご主人様が幸せになれたら私も嬉しいはずなのに……
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