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事の発端は、昨日の朝に遡る。
朝の授業が始まる前に、千秋がいつものように隣の教室にいる幼馴染、二階堂郷次(にかいどうごうじ)の様子を見に行くと、彼は頭を抱えて泣き喚いていた。
「終わったああ。俺の青春がああ!神よ、何故この世に園部和也などという悪魔を生み出したのですかああ!」
「おはよー、郷次」
「ううう」
「園部和也ってウチのクラスの園部君のこと? あ、それじゃとうとう桐川さんと付き合うことになったんだ。残念だったね」
彼女の言葉が追い討ちとなり、郷次は机に突っ伏して、うわあああー! と、雄叫びをあげた。
千秋は内心ホッとしていたが、泣きじゃくる郷次へ子供でも諭すように言った。
「仕方ないよ。園部君は転校初日からコクられるくらいのイケメンじゃない。ファンクラブの女の子は今、十二人だっけ?」
「うぐぐ」
「桐川榛名さんかー。美人だしあの二人お似合いだよ。模型作りだけが趣味のアンタが割り込むなんて無理無理、諦めなって。私、前から言ってたじゃん」
止めのような言葉を聞いた郷次は頭をかきむしった。
「そんなアンタにだってきっと、お……お似合いの人がいるから元気出しなって」
千秋は小声でそっと付け足したが、彼女の最後の言葉は聞こえなかったのか郷次は呻いてのたうちまわるばかりだった。
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