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耳を塞ぎたくなるほどの激しい音を響かせながら、全てのものが崩れ落ちていくなか…天高くまで舞い上がった真っ赤な火の粉と黒々とした煙を眺めながら、私は此処に立ち尽くして…ただただ涙を流すことしか出来ずにいる。
あぁ…。
この世に…確かなものなどありはしないのだろう。
ふと、己の名を呼ばれた気がして振り向いた先…砂利道に座り込んだ1匹の狐が心底心配そうに私を見つめていた。
慌てて頬を伝う涙を手の甲で拭い、精一杯微笑んで見せた私に、狐は少しだけ呆れた様な顔をしたけれど…慣れた様子で私に近づくと、着物の裾に顔をこすりつけた。
もうすっかり見慣れてしまったその仕草が、今日は酷く愛おしくて…私の頬を次から次へと涙が伝う。
あぁ、キミは…私が此処にいる理由だよ。
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