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「君の父上に認めてもらえる男になって帰ってくる。必ず迎えに来ると約束するよ…待っていてくれるかい?」
あの人はそう言って、笑っているのか泣いているのか…どちらとも言えない寂しそうな顔で笑うと、私の頬をそっと撫でたのだ。
あの人が私に触れたのは、後にも先にもあの一瞬だけだったというのに…その指先の感触も…温度も…私はとうの昔に忘れてしまった。
とどまることなく巡る季節が、私の中のあの人を1つ、また1つと消し去っていくことが酷く恐ろしいのだ。
どうして…私は此処にいるのだろう。
どうして…あの人は此処にいないのだろう。
どうして…何もかもが無くなってしまうのだろう。
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