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手元の味噌汁をかき混ぜながらハチ巻きをした薄青の着物をした青年へ睨みを利かせる。
「百一(ももいち)、お前またホウレン草残そうとしてるな」
「ギクッ」
分かりやすいほどの動揺。百一の皿はホウレン草だけ皿の隅に置かれている。
「だって苦いッス! 俺苦いものアレルギーなんス!」
「付喪神にアレルギーなんて無いだろ。作った十架(とっか)に悪いと思わないのかよ」
十架は一見ただの中二病だが、料理の腕は中々のものだ。あの性格さえなければいいのだが. . .
「あのロン毛男に悪いなんて思ったら終わりッスよ!」
「ちょっと百一。残しちゃダメじゃないの」
ここでオカン属性の鏡夏(きょうか)から援護射撃。百一は鏡夏の言うことには弱い。特に弱味とかは握られていないが、この真摯な態度にはお茶らけた百一も逆らえないらしい。
「うぐう、鏡夏サンが言うなら食べるッス. . .」
渋々ホウレン草を口に運び出す百一。何故家主の自分に従わず、同じ居候の付喪神に説得されるのかが解せない。
「ご主人もさりげなく小松菜を残さない!」
「くそバレたか」
「ちょっと主人、自分もじゃないッスか!」
家主権限は鏡夏には通じなかった。
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