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「ねー。優先席はお年寄りに譲りなさいって、そんな常識も知らないのかなー?」
「てかさー」
わざと聞こえるようにしているらしい。
この痛みも知らないくせに好き勝手言ってくれちゃって。
息を整えて言い返すのも面倒で放っておいた。
だが、俺が何も言わないのをいいことに、彼女らは大きな声で喋り続けていた。さすがにうるさいな、と思い始めた時だった。
扉を挟んで横にいた、いつの間にか先ほどのお婆さんに席を譲っていたらしい人影が、騒いでいた女子高生たちの前の吊革に掴まって言った。
「うるっせぇな、少し黙れよ」
必要以上に大きくない、言葉遣いの割に凛と澄んだ、どこか聞き覚えのある声だった。
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