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「そのじいさんは大層孫好きなじいさんで、離れたところに1人暮らしてる孫の生活がそりゃもう気がかりでならなかった。だが、病院で寝たきりのじいさんは、孫の携帯番号も知らねぇ。会いにも行けなけりゃ、連絡も取れねぇのさ」
「なにそれ。あなたのおじいさんの話?」
「違ぇよ。とりあえず黙って聞けや」
黙って聞けやとは何だ。そっちこそ黙って問題早く解けや。という文句は以下略。
「一方でそのじいさんの孫はグレちまってて、じいさんのことなんか何とも思ってねぇ。両親とだって早々に縁切って家を出て行っちまった」
「……やっぱりそれ、あなたのことなんじゃないの?」
「だから違ぇって」
大体俺は家出なんてしてねぇし家族思いだ、とか何とか言っている彼は誰がどう見ても`グレちまって´いる奴だった。髪は染めているし、制服はぶかぶかな上に着崩しているし、今気づいたがピアスの穴もあるじゃないか。親からもらった体に穴を開けるなんてとんでもない、と散々言われていた私からしてみれば、彼には家族思いというより親不孝者のイメージの方がしっくりきた。
ただ、しばしばサボり癖もあった彼がそんな見てくれになったのはつい最近のことであったため、少し気にはなっていたのだ。
「とにかくだ。そういう、可愛いかわいい孫の幸せが儂の幸せ~みたいなじいさんと、グレた孫と、その両親。つまりは、じいさんの息子夫婦がいたとしようぜ。俺は無関係だ。いいな?」
今じいさんを少し馬鹿にしたな?
まぁいいわ。そういう前提で話を聞こうじゃない。
頷いたところで彼はまだ問題集の方を凝視したままだったから、私はため息混じりに気の抜けた返事を返した。
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