秘密

7/14
前へ
/14ページ
次へ
 ヤツは急に立ち上がると自分の部屋へと戻っていった。  残された俺は、まるで処刑を待つ囚人のような心持ちだった。  不気味な静寂、それは数分の間だったが、一時間ほどの長さにも感じられた。  ヤツはコンビニの袋を持って、戻ってきた。  椅子に座ると、袋からココアを取り出して、その紙パックにストローを刺す。 「思い出さない? このココア」  そう言われて、俺は紙パックを凝視する。 「懐かしいな。俺が高校生ぐらいのときに、よく飲んでいた友人がいたな」 「その子、今も元気なの?」 「確か、亡くなったって聞いたけどな」  ふうん、ヤツはそう言って、ココアを一口吸った。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加