プロローグ

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僕の視界は、色が無い。 数年前の事故が原因で、全て白黒、モノクロに見える。 だから、周りの人間とは見え方の違いでよくケンカになった。 人間の得る情報の80%は視覚からだと言う。 僕にはそれがほとんど無いのだから、残りの20%で補って、折り合いをつけていくしか無かった。 正常に見えない世界。それでも、興味惹かれるものがあった。 視覚がダメなら、聴覚。 僕は、音楽を聴くことが好きになった。 だから音楽に逃げ込もうとしたけど、マニアのような人達には全く叶わない。 モノがうまく見えないから、楽器を弾くことすら難しかった。 だから今は、聴くことが好きだ。 音楽、ラジオの放送などはもちろん、鳥の囀り、川の流れる音もそうだ。 音楽は好きでも、楽器を弾くことは、一生無いと思っていた。 そう、彼女に出会うまでは。
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