清水湊side

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「清水さん、今日あの人来てないんですよ。ほら、清水さんの幼なじみの人」 今の時刻は昼の12時40分。 俺は店のキッチンから顔を出して、ちらりとフロアに目を向けた。 バイトの水瀬が言った「あの人」とは、俺の幼なじみで、この近くのビルで営業事務をしている多田若菜(ただわかな)のことだ。 水曜日の昼休み、いつも若菜はひとりでランチを食べにくる。 しかし今日は姿がないから、仕事が立て込んでいるのかもしれない。 「どうしたんですかねー。忙しいのかな」 「べつにあいつのことはいいだろ。 ほら!無駄口たたいてないで、これ20卓もってけ!」 「あっ、はい!」 今仕上げたばかりのカツレツを渡すと、水瀬はそそくさとフロアへ出て行った。
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