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「お疲れ。今日仕事終わったら電話したいんだけど、できる?」
メッセージを送信する前、一瞬見えないけど重たいなにかがズン、とのしかかった。
だけどそれを振り払うように送信してしまえば、重苦しさはゆっくり消えてなくなる。
もう後には引けないと、自分なりに腹もくくったんだろう。
ふぅ、と小さく息をついて、座っていた椅子から立ち上がった。
ふいに若菜が頭をよぎり、テーブルに置きかけたスマホを握り直した。
若菜とのチャットを開く。最後は昨日の夜送った「仕事終わった」「お疲れ」という文字で終わっていた。
その前のメッセージは若菜からで、若菜はあれから毎日短い連絡をくれる。
元々俺は用件しか連絡しない性格だから、雑談するというより若菜のメッセージに反応するだけになっているけど、それでも若菜から連絡がもらえると嬉しいし、なにより癒されていた。
これまで毎日やりとりすることなんてなかったから、付き合ったんだ、という実感も持てていることも嬉しい。
じんわりとした幸せを感じながら、若菜とのチャット画面を見て、指を動かした。
「今日は休みだから、昼まで寝た。夜原田に電話で話してみる」
送信して今度こそスマホをテーブルに置いた。
若菜はこれを見てどう思うだろう。
心配そうなあいつの顔が浮かぶ。
だからこそ、心配かけないようしっかりしないと、と自分に言い聞かせた。
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