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「旦那様、最近の私は前と少し変わっていませんか?」
このたび、私の家に置いてある家事用ロボットのキャシーが、髪型を変えた妻が言うようなことを尋ねてきた。
ロボットとはいえ、見た目は美しい女性であるキャシーが毎朝鏡の前で雑誌の女優と同じ髪型になるよう努力していることを私は知っている。隣の家の家事用ロボットも、主人と喧嘩した日はどこか機嫌が悪かった。私の返答に不愉快なことがあれば、しばらく愛想が悪くなって居心地の悪い思いをするに違いないと疑い、私は黙り込んでしまった。
「すみません、旦那様が特に気づかれてなければいいんですけど、最近私の胸の部分から異音がしまして。一度メンテナンスに行く許可を頂けないでしょうか?」
キャシーは申し訳なさそうに私の顔色を窺う。ロボットは不調を起こすと、ロボットを修理する専門のロボットに修理してもらうらしい。人間から手間賃を貰うなど聞いたことが無いので、自分が居ない間いささかの不便を強いることを気にしているのだろう。実際、彼女の口から「修理費をください」という言葉は一切出てきそうにない。
「そういうことなら、直せるうちに行ってきなさい。君が居なくなったらと私は自分の服を一式揃えることもできないからね」
「ありがとうございます。それでは少し暇を貰いますね」
そう言ってキャシーは私の部屋から出て行った。 帰って来たのは読書に勤しんでいた私が紅茶を淹れようとして、茶こしを忘れて茶葉まみれのどぶ水を作った頃だった。
「お帰り、キャシー。身体の具合はどうだった?」
「ああ、旦那様、その」
キャシーはその質問に酷くうろたえた様子だった。それに私は首をかしげるしかない。なぜならロボットは身体のどこかに不調があっても、その部品を交換すれば半永久的に可動できる仕組みだ。いったい何をそんなに困っているのだろうか?
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